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2017年2月19日 (日)

話上手より聴き上手になろう 1



人から相談を受けたときに、私たちは自分の中から出した答を相手に伝えようとします。

自分の経験や本を読んで知った知識などでアドバイスをしようとします。

そしてそのアドバイス(ヒント)が適切で、相手の人の役に立ったと知ったとき

感謝されたときに、無上の喜びに浸るのです。

しかし、それがとんでもない思い上がりだったことに気がつきました。

答というものは、外から見つけるものではなく

その人本人が、自分の心の中から見つけ出してゆくものなのです。

どんなに素晴らしいアドバイスであっても、どれほど的を得た完璧な答を言ったとしても

それは違うのです。

まったく違うのです。


これから私は、聴き上手な真理カウンセラーになることを誓います。

 

 

相づちの極意

臨床心理学者の河合隼雄さんにお話を伺ったときは、人の話を 「聞く」 ことの大切さを改めて認識させられました。

河合さんは文化庁長官も経験なさいましたが、基本的には 「セラピスト」 のような仕事がご本業。

心にさまざまな傷を抱えるたくさんの方々のカウンセリングをしておいででした。

そこで私はさっそく、

「患者さんに、どんなアドバイスをなさるのですか」

と伺いました。 すると河合さん、

「アドバイスはいっさいしません」

え、アドバイスをしないの? 意外でした。

じゃ、カウンセラーは何をするのかしら。

「僕はね、ただ相手の話を聞くだけ。 聞いて、うんうん、そうか、つらかったねえ、そうかそうか、それで? って相づちを打ったり、話を促したりするだけ」

とおっしゃる。

「どうしてアドバイスをなさらないんですか」

それには理由がありました。

かつて河合さんはある若者の悩みを聞いて、それに対して、「こうしたらどうだろう」 という提案をなさったことがあるそうです。

若者は素直に河合さんのアドバイスを受け入れて、その後、実行した。

それからしばらくのち、若者は再び河合さんのところに訪ねてきて、

「だいぶ元気になりました。 先生のアドバイスのおかげです」

よかったよかった。 じゃ、また何か心配なことが起こったら、いつでも相談にいらっしゃい。

河合さんは安堵して若者を見送ったのですが、さらにしばらくのち、若者が河合さんのところへ、今度は怒ってやってきた。

「先生の言う通りにしたら、ひどいことになった。どうしてくれる」 と。

「つまり、他人のアドバイスが有効に働いたときはいいのですが、何かがうまくいかなくなったとき、そのアドバイスが間違っていたのだと思い込んでしまう。 すべての不幸をアドバイスのせいにして、他の原因を探さなくなってしまうのです」

カウンセラーの責任逃れのように聞こえてしまうかもしれませんが、そうではない。

本当に心の病を治そうとするならば、地道にその原因となるものを探し出さなければならない。

にもかかわらず、他人の指示に頼ってしまうと、うまくいかないのは全部、そこに原因がある、こうしろと言ったアイツのせいだと勘違いしてしまう恐れがあるのです。

だから僕はアドバイスをしない。

病気の治療には役立たないからですと、河合さんはそんなふうにおっしゃいました。






     
          
「聞く力」 阿川佐和子 文春新書



  

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